門前旅の案内人ブログ

かるかや山西光寺の『韋駄天』様

かるかや山西光寺の韋駄天

 今年のNHK大河ドラマは、明治45年第5回ストックホルム大会に日本人初でオリンピックに出場した“日本のマラソンの父”金栗四三(しそう)を主人公とした『いだてん~』であります。空前のマラソンブームと来年に控える東京オリンピックへの助走として、このドラマが国民の志気を高めようとしています。

  『いだてん』とは、万象の根源を司るヒンドゥー教のシバ神の子とされる天竺(インド)の『韋駄天尊』のことです。サンスクリット語で『Skandaスカンダ』と云われ、南方の守護武神で四天王:増長天の八将軍の一人です。小児の病魔を取り去り、僧侶あるいは寺院や庫裡、伽藍などの守護武神、としてよく祀られています。諸説ありますが俗説では、釈迦が入滅された時、釈迦の舎利を盗み去った捷疾鬼(しょうしつき:人の血肉を食らう夜叉で素早い鬼)を、非常な速さで追いかけて取り戻した、とのことから『韋駄天健脚尊』などと崇められています。決して“欽ちゃん走り”などは比に値しない“韋駄天走り”の快速、快走の健脚尊なのです!

西光寺の『韋駄天』様は、平安初期の公卿・小野篁(たかむら)作と伝わっている木像です。篁は奇才の文人でしたが彫り物も数点残している、とのことで大変貴重なその一つと思われます。頭上に宝珠が付いた中国・唐時代の甲冑をまとい、合掌した手に宝剣を持つのですが、剣は紛失されたか不明です。立ち姿の足先は、無限の俊速を意味するものなのかスッパリとありません。闇の威力を示す漆黒の像。剥げ落ちた塗装後から金プチの岩の台座だったと思われ、万象の根源、天と地の呼応を示しているとか。また、左目のまぶたが欠けていて、洞察力や速い直感力を暗示しているのだそうです。

“老いは足から”と言いますが “韋駄天”の如く素早くご利益を・・・。

(追伸)平成14年に松山の奥道後に仕事で行きましたが、そこから道後温泉へ向かう途次、四国八十八ヶ所の第五十一番札所の石手寺に立ち寄りました。多くのお遍路さんの脚を守る見事な2m級の木造『韋駄天』様が、境内に屋根付きで祀られていました。参考に当時の写真を添付しておきます。

                        

    西光寺の韋駄天様        四国51番札所石手寺の韋駄天様

                               (寄稿者 : F.U)